06日21時24分=2018年=
男の闘い、ボクシング愛に涙する映画「あゝ、荒野」

【評】★5つが最高
★★★★
外国映画ではボクシングの名作映画は「ロッキー」「クリード チャンプを継ぐ男」「ザ・ハリケーン」「ミリオンダラー・ベイビー」をはじめ、数多くあるが、日本では2015年の安藤サクラ主演の「百円の恋」や「ボックス!」ぐらいだろうか。
その日本のボクシング映画の名作に仲間入りしたのが、寺山修司の小説を原作にした「あゝ、荒野」である。寺山修司の詩や演劇は好きで読んだり鑑賞したりしたが、この小説は読んでいなかった。寺山修司だけに、大好きだった競馬の場面が出てくる。小説は1966年に発表されたものだが、この映画では近未来の2020年が舞台になっている。
ボクシングと寺山修司の関係は良く分からないが、1977年の映画「ボクサー」(1977年)の監督をやっている。映画を撮るぐらい好きだったのだろう。そうそう。劇画「あしたのジョー」の主人公ジョーのライバルである力石徹が死んだ際、寺山は先着500名入場無料の葬儀を主催したことを思い出した。そして、あの主題歌の作詞は寺山修司だったけ。


そんな寺山修司の競馬愛とボクシング愛が乗り移ったような映画が「あゝ、荒野」である。前編157分、後147分の305分(計5時間5分)という長尺だが、全然長く感じない。どの場面もドキュメンタリー映画のような長回しで、演技を超えたギリギリの緊迫感があった。DVDレンタルされているので、ぜひ見てほしい映画だ。

この映画の一番の見どころはボクシングシーンである。本当に手に汗握る。血や汗が飛び散り、痛みさえ感じるすさまじい場面の連続。「百円の恋」(http://8446.blog79.fc2.com/blog-entry-2796.html)の安藤サクラもすごかったが、今回の少年院上がりの新宿信次(菅田将暉)と、赤面対人恐怖症と吃音に悩むバリカン健二(ヤン・イクチュン)のボクシングシーンはすさまじかった。ストーリーが進むにつれ、ふたりの体が引き締まり、腹筋が浮き出るようになる。パンチは鋭くなり、フットワークは軽く、まるで本物のボクサーのようだ。実写映画ではあるが「あしたのジョー」を思い浮かべざるを得なかった。
ストーリーはこうだ。建二は母親の死後、暴力をふるう父親と生活していたが耐えきれず、床屋に住み込みで働いている。新次の方は幼少時に父親が自殺、母にも捨てられた。こんな二人が出会い、元ボクサーである片目こと堀口(ユースケ・サンタマリア)や馬場(でんでん)にしごかれプロボクサーを目指す。人が心にもっている愛や孤独、SEXなどとも格闘する青春物語である。
新宿信次役をやった狂犬のような粗暴さを持つ菅田将暉がなんといってもすごかった。「ディストラクション・ベイビーズ」(http://8446.blog79.fc2.com/blog-entry-3402.html)を思い出した。木下あかりとのぎりぎりの濡れ場も、厭世的で素晴らしかった。
「息もできない」(http://8446.blog79.fc2.com/blog-entry-970.html)の名演を思い起こすバリカン健二役のヤン・イクチュンも、内面を表現する名演だった。ユースケ・サンタマリア、鬼コーチを務めたでんでんの脇役の働きも素晴らしかった。これから発表される映画賞には、誰が名を連ねてもおかしくない名演だった。
ライバル同士が戦うラストシーンは「あしたのジョー」の矢吹丈と力石徹の対戦と同じであった。もう、涙なくしては見られなかった。
今日の足跡
最低気温-0.6度、最高気温9.6度。晴れ。

○……今日、池上彰さんの番組「新年に教えたいSP」で、「お寺、神社が一番多い都道府県は?」という設問があった。お寺の1位は愛知県、そして神社の1位は新潟県であった。
新潟県の神社数は4749社で断トツの1位。ちなみにお寺は2796社で第8位だった。明治20年頃は新潟県の人口が日本一だったことによるという。



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