01日21時27分=2018年=
上越映画鑑賞会200本目の例会上映「残像」
【評】★5つが最高
★★★★
↓例会であいさつする上越映画鑑賞会の増村会長(高田世界館)

上越映画鑑賞会の会員になって長いけれど、9月30日の例会で節目の200回目の上映となった。1976年の1回目の上映から42年。記念すべき作品はアンジェイ・ワイダ監督の「残像」だった。監督の作品はこの映画で5本目の上映だという。
2016年10月9日に90歳で亡くなった巨匠が、死の直前に完成させたという遺作。死期迫る人が撮ったとは思えない不屈の精神が描かれていた。

「一党独裁」の国家は、あらゆるものに自由がなく、一つの価値観に縛られる。当然ながら本などの出版物は検閲される。芸術も同じ。社会主義リアリズムしか認められなくなった。特にスターリンが政権を取ってから、芸術は労働者や社会に貢献しなければならぬ、という政治的な芸術観が主流となった。それまではやっていたアヴァンギャルドは排除され、芸術は大衆を社会主義建設に目覚めさせなければならぬという、芸術だか政治だか、分からぬものになったのだ。
ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキというポーランドの画家で、美術理論家が主人公。大学の教壇に立っていた1949年から亡くなる1952年までの4年間を描いている。
小説家もそうだが、芸術家が権力に迎合したら、自分を捨てたと同然。転向を迫られても、そうはいかない。アヴァンギャルドなスタイルをパッとリアリズムに変えられるわけもない。
当初から予想はつくが、大学の教壇から追われ、あらゆる再就職の道を閉ざされる。仕事だけではなく、配給証を奪われ、食料を得ることもできない。転向しなければ“死”という状況下、学生たちが応援してくれるが、その道も閉ざされる。学生たちの展覧会が破壊され、カフェの壁画がはがされ、妻と開設した美術館も閉鎖されてしまう。アパートの食事代の未払いが2か月分たまり、食事も食べられない。さらに、肺結核にかかってしまい、倒れてしまうのだ。
芸術は多様な文化のぶつかり合いから生まれる。社会主義リアリズムのような一つの価値観だけでは、発展はないと思う。
経済大国になった中国も、文化、芸術方面ではまったく進歩がないのはそのためだ。
はじめのシーンが印象的。ストゥシェミンスキ(ボグスワフ・リンダ)が室内で絵を描いていると、白いキャンバスが突然、赤に染まってしまう。アパートの上階からスターリンの肖像が描かれた赤い旗が垂れ幕のように下され、窓が赤い布で覆われた。そのため、室内が赤い光で染まってしまったのだ。ストゥシェミンスキが旗を破り、光を入れようとすると、それが当局に見咎められ、連行されてしまうのだ。
最後まで事態は好転することなく、最後は死を迎えるというすごく分かりやすいストーリー。だが、好意を持つ女性ハンナの存在が中途半端。アパートの鍵まで渡しているので、恋に落ちるのかと思った。
↓予告編
今日の足跡
最低気温18.2度、最高気温26.7度。雨のち晴れ。台風24号は夜中に最接近し、北海道方面に抜けていった。夜中に強い吹き返しの風が吹いたものの、大したことはなかった。

○……庭に金木犀の花が咲いた。先日まで雨模様の天気だったので、匂いがなく、気が付かなかった。昨年、枝をずいぶん切ったので、今年は咲かないかな、と思っていた。

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