43年ぶりに見て再び感動!日本映画の名作「名もなく貧しく美しく」

当時の映画ノートを見ると、感想が書いてあった。今日見たときの感想とほとんど同じ。つまり、43年間進歩なしということだろうか。43年前の感想を再録する。
このような感動をもって映画を見終えたのは久しぶりである。今思い出しても素晴らしかった場面が目に浮かぶ。
まず、片山との出会い。都会の喧騒の中でも、手話で話が通じる素晴らしさ。それから2人が結ばれて子供が聾になることを恐れて産む決心がつかないところ。そしてやっと産んだ子供が、2人が聾であったため死なせてしまう場面。夫婦2人の靴磨きとささやかな生活。母の苦心によるミシン購入の喜び。障害者の子であることをからかわれ、両親をうとんじるようになった我が子。ミシンを売り飛ばしてしまった刑務所から出てきた弟の弘一。家出する明子に、追いかけてきた道夫と電車のガラス越しに交わす手話の場面は、感動的。2人の間にたとえ空気がなくとも話が通じるのである。そして、両親思いとなった息子は、友達を連れてきて、ジェスチャー遊びをやって、手話でカンニングして「ずるいや」と言われる場面…どれも素晴らしく、脳裏に焼き付いている。
戦災孤児のアキラが訪ねてきた喜びのあまり、秋子は大通りに飛び出し、クラクションが聞こえないためにトラックに跳ねられてしまった。名もなく貧しく死んだ秋子の後には何も残らない。だが、息子の一郎にとっては、こよなく美しい思い出、心のなかに永遠に残る思い出であった。
そして墓の前で手話で亡き妻に話しかける夫のいじらしさ。手話による対話を映画に取り入れたことの新鮮さが光る。サイレント映画のようである。だから2人の縁起の素晴らしさが余計目立ったのだと思う。
子役も大変上手だった。夫の道夫が秋子に「この家族内のことは、耳が聞こえるようによく分かる」と言ったのが印象的。耳の聞こえない2人が、ラジオで流れる音楽を、スピーカーの振動で感じて楽しそうに踊る場面が忘れがたい。
(1977年5月22日の「映画ノート」より)
43年ぶりに見た感想を少し付け加えると、脚本と、高峰秀子の演技の素晴らしさが特筆される。手話には苦労しただろう。冒頭の東京空襲はどうやって撮影したのだろうか。CGでは出せない生々しさがあった。戦後の闇市などの臭いがしそうな汚らしさは、今ではもう無理。戦災孤児のアキラが加山雄三だったとは。
「109映画祭」は6日まで。日本映画の名作4本を上映するが、「名もなく…」は6日10時から上映。詳しくは高田世界館のホームページ(http://takadasekaikan.com/)へ。1本500円。上越映画鑑賞会の会員は400円。
今日の足跡
最低気温2.9度、最高気温8.0度。曇りときどき雨。

○……吉野家の「牛すき鍋膳」を肉2倍にして食べた。肉の食べごたえ十分。吉野家の株を持っているので、株主優待として3000円分の優待券が送られてきたのだ。一応株主なので、たまには豪華に牛丼を食べないとね。でも、株価がずいぶん下がっているのが困る。
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