26日16時23分=2022年=
宝田明の遺作「世の中にたえて桜のなかりせば」
【評】★5つが最高、☆は半分
★★★☆
ゴジラシリーズなどで知られる俳優の宝田明さんの遺作「世の中にたえて桜のなかりせば」を上越映画鑑賞会の例会上映で見てきた。プロデューサーも務めた宝田さんは、映画公開を前にした舞台挨拶で最後の姿を見せた後、昨年3月14日に亡くなったという。映画では終活アドバイザーの役であり、まるで自分の終活として映画を作ったような実に見事な散り際だ。

なお、宝田さんのプロフィールを調べていたら、本県に暮らしていたことが分かった。終戦後ハルピンから引き揚げ、父の本籍地である新潟県岩船郡村上本町(現・村上市)に移り、同市大工町にある寶田家の菩提寺笠原山善行寺に身を寄せる。寺の四畳半で2年間暮らし、村上本町国民学校に通ったという。

さて、主役は終活屋「ハレノヒ」のアドバイザーを務める柴田敬三(宝田明)と、アルバイトの女子高生・吉岡咲(「乃木坂46」の岩本蓮加)の2人。敬三は余命幾ばくもない妻(吉行和子)を抱え、咲は不登校である。咲は様々な境遇の人々の「終活」の手助けをしていきながら、成長していく。
↓女子高生・吉岡咲(「乃木坂46」の岩本蓮加)

終活というテーマに絡めて大きな要素となっているのが「桜」。タイトルの「世の中にたえて桜のなかりせば」は、「春の心はのどけからまし」と続く。平安時代の歌人、在原業平が詠んだ歌だ。「もし桜がなかったなら、どんなに春をのどかに過ごせるだろう」という意味だが、逆説として桜が心を乱すような魅力を持っていることを歌っている。
もう一つの「さくら」は、茨木のり子の詩で、冒頭など何回か出てきて、テーマに深みを与えている。最後の2行が素晴らしい。
「さくら」
ことしも生きて
さくらを見ています
ひとは生涯に
何回ぐらいさくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回 四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい霞だつせいでしょう
あでやかとも妖しとも不気味とも
捉えかねる花のいろ
さくらふぶきの下を ふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と
相談にくる人々は、なにかマイナス志向を持っている。宇宙飛行士を目指している青年は、万が一のために家族に残す遺書が書けずに悩んでいる。死を間近にした男性は、自分のした仕事を映像として残そうと相談に来る。
さらには咲の担任でかつて国語教師であった南雲は生徒からのイジメに遭い、教師をやめ自暴自棄の生活をしていた。自身も不登校で行き場を求めている咲に、敬三は病気で老い先短い妻とかつて見た桜の下での思い出を語る。咲は敬三にないしょで、敬三夫婦がかつて見たという桜の木を探しに出かけるが、その桜は既に枯れてしまっていた。

“花咲かじいさん”のように枯れ木に花を咲かせる場面は予想できたが、とても美しい場面だった。そして、敬三が咲たちに向かって言う。「桜は下を向いて咲くんです。私達が上を向くためにね」と。
今日の
最低気温6.6度、最高気温21.7度。晴れ。
○……もったいないような晴天の1日だった。小春日和というのだろうか。午後から映画鑑賞会の例会で出かける予定があったが、午前中の晴天がもったいなかったので、車の冬タイヤ組み換えをした。
昨年、トルクレンチやフロアジャッキを買ったので、作業が格段に楽になった。タイヤを洗ったり、エアを入れたりする時間を入れても、2台分で2時間ほどで完了した。これでいつ雪が降っても大丈夫だ。
★★★☆
ゴジラシリーズなどで知られる俳優の宝田明さんの遺作「世の中にたえて桜のなかりせば」を上越映画鑑賞会の例会上映で見てきた。プロデューサーも務めた宝田さんは、映画公開を前にした舞台挨拶で最後の姿を見せた後、昨年3月14日に亡くなったという。映画では終活アドバイザーの役であり、まるで自分の終活として映画を作ったような実に見事な散り際だ。

なお、宝田さんのプロフィールを調べていたら、本県に暮らしていたことが分かった。終戦後ハルピンから引き揚げ、父の本籍地である新潟県岩船郡村上本町(現・村上市)に移り、同市大工町にある寶田家の菩提寺笠原山善行寺に身を寄せる。寺の四畳半で2年間暮らし、村上本町国民学校に通ったという。

さて、主役は終活屋「ハレノヒ」のアドバイザーを務める柴田敬三(宝田明)と、アルバイトの女子高生・吉岡咲(「乃木坂46」の岩本蓮加)の2人。敬三は余命幾ばくもない妻(吉行和子)を抱え、咲は不登校である。咲は様々な境遇の人々の「終活」の手助けをしていきながら、成長していく。
↓女子高生・吉岡咲(「乃木坂46」の岩本蓮加)

終活というテーマに絡めて大きな要素となっているのが「桜」。タイトルの「世の中にたえて桜のなかりせば」は、「春の心はのどけからまし」と続く。平安時代の歌人、在原業平が詠んだ歌だ。「もし桜がなかったなら、どんなに春をのどかに過ごせるだろう」という意味だが、逆説として桜が心を乱すような魅力を持っていることを歌っている。
もう一つの「さくら」は、茨木のり子の詩で、冒頭など何回か出てきて、テーマに深みを与えている。最後の2行が素晴らしい。
「さくら」
ことしも生きて
さくらを見ています
ひとは生涯に
何回ぐらいさくらをみるのかしら
ものごころつくのが十歳ぐらいなら
どんなに多くても七十回ぐらい
三十回 四十回のひともざら
なんという少なさだろう
もっともっと多く見るような気がするのは
祖先の視覚も
まぎれこみ重なりあい霞だつせいでしょう
あでやかとも妖しとも不気味とも
捉えかねる花のいろ
さくらふぶきの下を ふららと歩けば
一瞬
名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態
生はいとしき蜃気楼と
相談にくる人々は、なにかマイナス志向を持っている。宇宙飛行士を目指している青年は、万が一のために家族に残す遺書が書けずに悩んでいる。死を間近にした男性は、自分のした仕事を映像として残そうと相談に来る。
さらには咲の担任でかつて国語教師であった南雲は生徒からのイジメに遭い、教師をやめ自暴自棄の生活をしていた。自身も不登校で行き場を求めている咲に、敬三は病気で老い先短い妻とかつて見た桜の下での思い出を語る。咲は敬三にないしょで、敬三夫婦がかつて見たという桜の木を探しに出かけるが、その桜は既に枯れてしまっていた。

“花咲かじいさん”のように枯れ木に花を咲かせる場面は予想できたが、とても美しい場面だった。そして、敬三が咲たちに向かって言う。「桜は下を向いて咲くんです。私達が上を向くためにね」と。
今日の足跡
最低気温6.6度、最高気温21.7度。晴れ。
○……もったいないような晴天の1日だった。小春日和というのだろうか。午後から映画鑑賞会の例会で出かける予定があったが、午前中の晴天がもったいなかったので、車の冬タイヤ組み換えをした。
昨年、トルクレンチやフロアジャッキを買ったので、作業が格段に楽になった。タイヤを洗ったり、エアを入れたりする時間を入れても、2台分で2時間ほどで完了した。これでいつ雪が降っても大丈夫だ。
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