09日19時27分=2023年=
宗教による分断描く映画「ベルファスト」
【評】★5つが最高
★★★★
↓予告編動画

昨年は旧統一教会による高額献金や、霊感を使った不当な勧誘などで多くの被害者を出したことが明らかになり、日本中を震撼させた。宗教は人を救う役割もあるが、世界の歴史をみると、戦争を引き起こす要因になったことも多い。Amazonビデオで見た2022年3月日本公開のイギリス映画「ベルファスト」は、プロテスタントの暴徒がカトリック住民への攻撃を始め、平和だったベルファストの町が悪夢へと変わる。ロシアのウクライナ侵攻もそうだが、平和が一瞬で失われる怖さを強く感じさせた映画だった。


映画の主人公バディ(ジュード・ヒル)は北アイルランドのベルファストで生まれ育った9歳のかわいらしい少年。ゴミ箱の蓋を盾にしてチャンバラごっこみたいな遊びをやって遊んでいる。女の子は「せっせっせ」だ。愛にあふれた家族と友だちに囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごしていた。キャサリンという成績優秀な女の子と、学校で隣の席に座りたくて、勉強を頑張っているのが微笑ましい。
だが、1969年8月15日、穏やかな日々は突然の暴動により、悪夢へと変わる。プロテスタントの暴徒が、街のカトリック住民への攻撃を始めたのだ。バディが駆け抜けていた通りに銃弾が飛び交い、家に火が放たれる。
住民全員が顔なじみで、まるでひとつの家族のようだったベルファストの町は、この日を境に分断されていく。暴力と隣り合わせの日々の中で、バディと家族たちも故郷を離れるか否かの決断を迫られる。第46回トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞し、第94回アカデミー賞でも作品賞、監督賞ほか計7部門にノミネートされた。ほとんどが美しいモノクロ映像で、監督のケネス・ブラナーが、自身の幼少期の体験を投影して描いた自伝的作品である。
↓家族で映画を見る場面

↓サンダーバードの制服を着て遊ぶバディ

一方、暗い場面ばかりの映画ではない。音楽は「Everlasting Love」など1960年代後半の英ポップソングが、とてもいい雰囲気を出している。ダンスシーンも楽しい。また、バディが家族と映画館で見る映画も楽しい。「チキ・チキ・バン・バン」が出てくる。グラマー女優ラクエル・ウェルチの「恐竜百万年」を家族で見る場面があり、母親が夫に文句を言うのが笑える。TVに映る西部劇はゲイリー・クーパーが出ていたので「真昼の決闘」かもしれない。バディがクリスマスに「サンダーバード」の制服を買ってもらえるなんてうらやましい。
↓ターキシーデライト
バディが万引きさせられてとっさに盗ったのがターキッシュ・デライトというお菓子。調べたら、トルコのお菓子のようだ。「誰が食べるのよ!」と選択のまずさをなじられていた。子供の好みではない味のようだ。
↓ジュディ・リンチの演技が素晴らしかった

バディ役の少年、ジュード・ヒルがいなければ、この映画は成り立たなかっただろう。そして、彼を取り巻く家族が素晴らしい。特にユーモアあふれる祖父役のキアラン・ハインズ、祖母役のアカデミー賞女優ジュディ・デンチが素晴らしかった。家族がバスに乗って去っていく際、一人残った祖母は「行きなさい。振り返らずに。大好きよ」という場面のクローズアップは素晴らしかった。
脚本も素晴らしく、書きとめたセリフがたくさんあった。
病院に入院した祖父が、バディに「みんな、お前の味方だ。お前がどこに行って何になろうと、一生変わらん」など、諭す場面は素晴らしかった。ほかに「(算数のように)答えがひとつなら紛争など起きんよ」は心に響いた。「愛の底には憐憫がある」「女は謎。そして女は強い」。「アイルランド人に必要なのは電話とギネスと『ダニー・ボーイ』」も良かったな。
バディはベルファストを去る際、カトリックであるキャサリンと別れることになり、父に「僕はあの子と結婚できる?」と聞く。父親は「できるさ。優しくて寛大で、お互いを尊敬しあえるなら、あの子も、あの子の家族も大歓迎さ」と答えた。100点満点の答えだ。
今日の
最低気温3.1度、最高気温12.4度。曇り。
○……昨日から始まった大河ドラマ「どうする家康」。導入部の仕掛けとしては面白い家康像だと思う。大河ドラマで徳川家康が主人公となるのは3度目であり、単独としては『徳川家康』(1983年)以来40年ぶりだという。その時の原作は山岡荘八。小出町(現在の魚沼市)生まれである。昨年、小出公園に行って文学碑を見てきた。
◇魚沼市小出でぶらぶら(2022年11月24日)
http://8446.blog79.fc2.com/blog-entry-5547.html
↓山岡荘八文学碑(魚沼市)

★★★★
↓予告編動画

昨年は旧統一教会による高額献金や、霊感を使った不当な勧誘などで多くの被害者を出したことが明らかになり、日本中を震撼させた。宗教は人を救う役割もあるが、世界の歴史をみると、戦争を引き起こす要因になったことも多い。Amazonビデオで見た2022年3月日本公開のイギリス映画「ベルファスト」は、プロテスタントの暴徒がカトリック住民への攻撃を始め、平和だったベルファストの町が悪夢へと変わる。ロシアのウクライナ侵攻もそうだが、平和が一瞬で失われる怖さを強く感じさせた映画だった。


映画の主人公バディ(ジュード・ヒル)は北アイルランドのベルファストで生まれ育った9歳のかわいらしい少年。ゴミ箱の蓋を盾にしてチャンバラごっこみたいな遊びをやって遊んでいる。女の子は「せっせっせ」だ。愛にあふれた家族と友だちに囲まれ、映画や音楽を楽しみ、充実した毎日を過ごしていた。キャサリンという成績優秀な女の子と、学校で隣の席に座りたくて、勉強を頑張っているのが微笑ましい。
だが、1969年8月15日、穏やかな日々は突然の暴動により、悪夢へと変わる。プロテスタントの暴徒が、街のカトリック住民への攻撃を始めたのだ。バディが駆け抜けていた通りに銃弾が飛び交い、家に火が放たれる。
住民全員が顔なじみで、まるでひとつの家族のようだったベルファストの町は、この日を境に分断されていく。暴力と隣り合わせの日々の中で、バディと家族たちも故郷を離れるか否かの決断を迫られる。第46回トロント国際映画祭で最高賞の観客賞を受賞し、第94回アカデミー賞でも作品賞、監督賞ほか計7部門にノミネートされた。ほとんどが美しいモノクロ映像で、監督のケネス・ブラナーが、自身の幼少期の体験を投影して描いた自伝的作品である。
↓家族で映画を見る場面

↓サンダーバードの制服を着て遊ぶバディ

一方、暗い場面ばかりの映画ではない。音楽は「Everlasting Love」など1960年代後半の英ポップソングが、とてもいい雰囲気を出している。ダンスシーンも楽しい。また、バディが家族と映画館で見る映画も楽しい。「チキ・チキ・バン・バン」が出てくる。グラマー女優ラクエル・ウェルチの「恐竜百万年」を家族で見る場面があり、母親が夫に文句を言うのが笑える。TVに映る西部劇はゲイリー・クーパーが出ていたので「真昼の決闘」かもしれない。バディがクリスマスに「サンダーバード」の制服を買ってもらえるなんてうらやましい。
↓ターキシーデライト
バディが万引きさせられてとっさに盗ったのがターキッシュ・デライトというお菓子。調べたら、トルコのお菓子のようだ。「誰が食べるのよ!」と選択のまずさをなじられていた。子供の好みではない味のようだ。
↓ジュディ・リンチの演技が素晴らしかった

バディ役の少年、ジュード・ヒルがいなければ、この映画は成り立たなかっただろう。そして、彼を取り巻く家族が素晴らしい。特にユーモアあふれる祖父役のキアラン・ハインズ、祖母役のアカデミー賞女優ジュディ・デンチが素晴らしかった。家族がバスに乗って去っていく際、一人残った祖母は「行きなさい。振り返らずに。大好きよ」という場面のクローズアップは素晴らしかった。
脚本も素晴らしく、書きとめたセリフがたくさんあった。
病院に入院した祖父が、バディに「みんな、お前の味方だ。お前がどこに行って何になろうと、一生変わらん」など、諭す場面は素晴らしかった。ほかに「(算数のように)答えがひとつなら紛争など起きんよ」は心に響いた。「愛の底には憐憫がある」「女は謎。そして女は強い」。「アイルランド人に必要なのは電話とギネスと『ダニー・ボーイ』」も良かったな。
バディはベルファストを去る際、カトリックであるキャサリンと別れることになり、父に「僕はあの子と結婚できる?」と聞く。父親は「できるさ。優しくて寛大で、お互いを尊敬しあえるなら、あの子も、あの子の家族も大歓迎さ」と答えた。100点満点の答えだ。
今日の足跡
最低気温3.1度、最高気温12.4度。曇り。
○……昨日から始まった大河ドラマ「どうする家康」。導入部の仕掛けとしては面白い家康像だと思う。大河ドラマで徳川家康が主人公となるのは3度目であり、単独としては『徳川家康』(1983年)以来40年ぶりだという。その時の原作は山岡荘八。小出町(現在の魚沼市)生まれである。昨年、小出公園に行って文学碑を見てきた。
◇魚沼市小出でぶらぶら(2022年11月24日)
http://8446.blog79.fc2.com/blog-entry-5547.html
↓山岡荘八文学碑(魚沼市)

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