05日20時55分=2023年=
木下恵介監督の代表作「二十四の瞳」
木下惠介監督・脚本、高峰秀子主演による日本映画の名作「二十四の瞳」(1954年・モノクロ作品)を、45年ぶりに見直した。若い人は「にじゅうよんの瞳」と言う人もいるが、「にじゅうしの瞳」である。第二次世界大戦が女性教師と生徒たちにもたらした数多くの苦難と悲劇を描いた涙なしには見られない名作だ。また、静かな反戦映画ともいえる。

公開年の「キネマ旬報ベスト・テン」で、同年公開の黒澤明監督作『七人の侍』を抑えて第1位となったのは、異論もあるが、どっちにしろ、大名作であることは間違いない。

ロケの舞台となった小豆島には行ってみたいと思う。いや、小豆島に行きたいために映画を見直したようなものだ。小豆島には映画撮影時のオープンセットを活用した「二十四の瞳映画村」がある。
最初にこの映画を見た記録が私の「映画ノート」にある。大学時代の1977年2月26日、東京・京橋の旧フィルムセンターの「木下恵介監督特集」で見た。入館料は140円。フィルムセンターにはずいぶん通ったものだ。鑑賞料金よりも電車代の方が高くついた。
ノートには感想が書かれているが、今回見直しても、学生の頃とそれほど差異はない。人間的に成長していないのだろうか。
最初に「子役に兄弟、姉妹を使ったことが成功している」と書いている点は、今回も特に感じた。1年から4年生までと高学年で、血のつながっている実の兄弟、姉妹を使ったので、成長しても顔は似ているのは当然だ。ぱっと見て顔と名前が一致する。大人役も似た人を集めたので、スムーズに感情移入ができた。子役は朴訥とした喋り方だが、小豆島という地でのロケなのでイントネーションの違いぐらいにしか感じない。そして、歌ばかりうたっているので、せりふが少ない。

唱歌「仰げば尊し」が子供たちによって歌われ、中間部でも小学校卒業式で合唱されるし、エンディング・テーマとしても流される。女主人公の教師の半生をこの歌で綴っているような思いがする。
もう1点も同様に感じた。「音楽が全編にわたり、唱歌を使っていたことが新しかった。たしかに冒険ではあるが、子供のときのあまりにも自由でのびのびとして歌をうたっている様子が、のちの大人になった時の悲惨さと対比させた。修学旅行の記念写真もそうだし、自転車もそうだ」と書いている。調べてみたら、150分の上映時間中90分が唱歌の歌唱シーンで占められているという。
さらに「東京中心のドラマではなく、ロケ地に小豆島を使ったことが、成功している。方言も充分に使っていて、地方色が出ている。前半はいかにもメロドラマ的ストーリーであったが、嘘を感じさせないのはロケーションの効果だろう」と書いている。
最後に「ラストの、これでもかという涙を誘う細かな演出は見事だった。周囲でもすすり泣く声が響いた」と書いている。また、「木下監督はジャン・ルノアールの〈河〉に感心してこの作品の手本としたという」と書いている。自分で書いておきながら記憶になかったので、探してみたら、Amazonプライムビデオにあった。
こういう連鎖的な映画の見方をしているので、見たい映画がどんどん増えていく。
↓「二十四の瞳」DVDとBlu-ray
今日の
最低気温-1.6度、最高気温9.3度。晴れ。日中の気温はそれほど上がらない。
○……昨日のブログに2022年のキネマ旬報ベストテンについて触れた。日本映画では「ある男」「土を喰らう十二ヵ月」「PLAN 75」「さがす」の4本を見たが、見逃した作品も多かった。
1:ケイコ 目を澄ませて
2:ある男
3:夜明けまでバス停で
4:こちらあみ子
5:冬薔薇(ふゆそうび)
6:土を喰らう十二ヵ月
7:ハケンアニメ!
8:PLAN 75
9:さがす
10:千夜、一夜
外国映画では「リコリス・ピザ」「トップガン マーヴェリック」「クライ・マッチョ」「コーダ あいのうた」「ベルファスト」「ウエスト・サイド・ストーリー」の6本を見た。
1:リコリス・ピザ
2:トップガン マーヴェリック
3:パラレル・マザーズ
4:クライ・マッチョ
5:アネット
6:コーダ あいのうた
7:ベルファスト
8:ウエスト・サイド・ストーリー
9:戦争と女の顔
10:あなたの顔の前に
つまり、日本映画、外国映画を合わせて、ベストテン作品のうち、50%を見たことになる。
「土を喰らう十二ヵ月」で主演男優賞を獲得した沢田研二は、文句なしの演技だった。

公開年の「キネマ旬報ベスト・テン」で、同年公開の黒澤明監督作『七人の侍』を抑えて第1位となったのは、異論もあるが、どっちにしろ、大名作であることは間違いない。

ロケの舞台となった小豆島には行ってみたいと思う。いや、小豆島に行きたいために映画を見直したようなものだ。小豆島には映画撮影時のオープンセットを活用した「二十四の瞳映画村」がある。
最初にこの映画を見た記録が私の「映画ノート」にある。大学時代の1977年2月26日、東京・京橋の旧フィルムセンターの「木下恵介監督特集」で見た。入館料は140円。フィルムセンターにはずいぶん通ったものだ。鑑賞料金よりも電車代の方が高くついた。
ノートには感想が書かれているが、今回見直しても、学生の頃とそれほど差異はない。人間的に成長していないのだろうか。
最初に「子役に兄弟、姉妹を使ったことが成功している」と書いている点は、今回も特に感じた。1年から4年生までと高学年で、血のつながっている実の兄弟、姉妹を使ったので、成長しても顔は似ているのは当然だ。ぱっと見て顔と名前が一致する。大人役も似た人を集めたので、スムーズに感情移入ができた。子役は朴訥とした喋り方だが、小豆島という地でのロケなのでイントネーションの違いぐらいにしか感じない。そして、歌ばかりうたっているので、せりふが少ない。

唱歌「仰げば尊し」が子供たちによって歌われ、中間部でも小学校卒業式で合唱されるし、エンディング・テーマとしても流される。女主人公の教師の半生をこの歌で綴っているような思いがする。
もう1点も同様に感じた。「音楽が全編にわたり、唱歌を使っていたことが新しかった。たしかに冒険ではあるが、子供のときのあまりにも自由でのびのびとして歌をうたっている様子が、のちの大人になった時の悲惨さと対比させた。修学旅行の記念写真もそうだし、自転車もそうだ」と書いている。調べてみたら、150分の上映時間中90分が唱歌の歌唱シーンで占められているという。
さらに「東京中心のドラマではなく、ロケ地に小豆島を使ったことが、成功している。方言も充分に使っていて、地方色が出ている。前半はいかにもメロドラマ的ストーリーであったが、嘘を感じさせないのはロケーションの効果だろう」と書いている。
最後に「ラストの、これでもかという涙を誘う細かな演出は見事だった。周囲でもすすり泣く声が響いた」と書いている。また、「木下監督はジャン・ルノアールの〈河〉に感心してこの作品の手本としたという」と書いている。自分で書いておきながら記憶になかったので、探してみたら、Amazonプライムビデオにあった。
こういう連鎖的な映画の見方をしているので、見たい映画がどんどん増えていく。
↓「二十四の瞳」DVDとBlu-ray
今日の足跡
最低気温-1.6度、最高気温9.3度。晴れ。日中の気温はそれほど上がらない。
○……昨日のブログに2022年のキネマ旬報ベストテンについて触れた。日本映画では「ある男」「土を喰らう十二ヵ月」「PLAN 75」「さがす」の4本を見たが、見逃した作品も多かった。
1:ケイコ 目を澄ませて
2:ある男
3:夜明けまでバス停で
4:こちらあみ子
5:冬薔薇(ふゆそうび)
6:土を喰らう十二ヵ月
7:ハケンアニメ!
8:PLAN 75
9:さがす
10:千夜、一夜
外国映画では「リコリス・ピザ」「トップガン マーヴェリック」「クライ・マッチョ」「コーダ あいのうた」「ベルファスト」「ウエスト・サイド・ストーリー」の6本を見た。
1:リコリス・ピザ
2:トップガン マーヴェリック
3:パラレル・マザーズ
4:クライ・マッチョ
5:アネット
6:コーダ あいのうた
7:ベルファスト
8:ウエスト・サイド・ストーリー
9:戦争と女の顔
10:あなたの顔の前に
つまり、日本映画、外国映画を合わせて、ベストテン作品のうち、50%を見たことになる。
「土を喰らう十二ヵ月」で主演男優賞を獲得した沢田研二は、文句なしの演技だった。
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Comment
「ノートには感想が書かれているが、今回見直しても、学生の頃とそれほど差異はない」のは核心を突いた感想だったからだと思います。学生時代と比べてもブレが無いのは凄い事ではないですか。
例えば「嘘を感じさせないのはロケーションの効果」とは見事な見立てだと思います。
例えば「嘘を感じさせないのはロケーションの効果」とは見事な見立てだと思います。
きょう鑑賞しました。多くの人に見てもらいたい掛け値なしの「感動作」ですが、キネ旬ベストテンに名前がなかったのは公開が12月と遅かったからでしょうか。2023年ベストの対象?
コメントありがとうございます。
「二十四の瞳」は「お涙頂戴の中途半端な反戦映画」という人もいますが、ドラマとしては良くできている。「悲惨な戦争を二度と起こすまい」と思わせる効果は十分にあります。
「二十四の瞳」は「お涙頂戴の中途半端な反戦映画」という人もいますが、ドラマとしては良くできている。「悲惨な戦争を二度と起こすまい」と思わせる効果は十分にあります。
コメントありがとうございます。
私も「ラーゲリより愛を込めて」はご当地ロケということもあり、私も2022年の日本映画では「第4位」でした。12月公開とはいえ、当然、キネ旬の選考映画に入っています。
でも、キネマ旬報の選考委員の顔ぶれをみると、ベストテン入りは無理だったのでしょう。
ロシアのウクライナ侵攻という危機的状況下、この映画の存在意義があると思います。
私も「ラーゲリより愛を込めて」はご当地ロケということもあり、私も2022年の日本映画では「第4位」でした。12月公開とはいえ、当然、キネ旬の選考映画に入っています。
でも、キネマ旬報の選考委員の顔ぶれをみると、ベストテン入りは無理だったのでしょう。
ロシアのウクライナ侵攻という危機的状況下、この映画の存在意義があると思います。