10日20時30分=2023年=
いじめや暴力、LGBTなどを投げかける是枝裕和監督の「怪物」
【評】★5つが最高
★★★★
是枝裕和監督が坂元裕二のオリジナル脚本で描いた問題作「怪物」。特撮の怪獣映画ではない(笑)。坂元の脚本は第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で脚本賞を受賞した。そして、音楽は3月に他界した坂本龍一が手掛け、本作が遺作となった。必見の映画である。

映画の舞台は大きな湖のある郊外の町。小学生の息子・湊(みなと)を愛するシングルマザーの早織(安藤サクラ)が、担任の保利(永山瑛太)からいじめと暴力を受けていることを知り、学校へ乗り込む。学校側は形式的な謝罪をして深々と頭を下げるだけ。説明は一切しない。それは子供同士のけんかが原因のものに見えたが、担任や児童の目線で事件を見ると、まったく違って見える。これをマスコミが嗅ぎつけ、社会を巻き込んだ事件に発展していく。そしてある嵐の朝、当事者子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。これ以上、ストーリーを書いてもネタバレになる。映画館で見ないと、この映画の良さが分からない。
後半は湊と同級生の依里(より)との関わりが中心になり、台風の一夜の出来事によりLGBTを自覚していく。LGBTを小学生に演じさせるのはこれが限界なんだろう。
LGBTなど性的少数者への理解増進法案に関し、自民、公明、日本維新の会、国民民主4党が合意した修正案を賛成多数で可決した。6月13日の衆院本会議で可決され、参院に送られる。来週中にも成立する。このタイミングで映画を公開したのは、営業的にも考えたことだろう。
主演といってもいい男の子2人の演技は圧巻だ。自然体で付き合っていた2人を追い込んでいったのは、クラスメイトであり、学校であり、社会であり、マスコミだった。恐ろしいのはこれらの「怪物」だったのだ。だが、「嘘」も混じっていることから、真相は「藪の中」にある。
学校内で起きた同じ事件が、立場を変えるとまったく正反対の内容になるという2部構成の映画は、黒澤明監督の「羅生門」(1950年)と同じ手法。「羅生門」は第12回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞、第24回アカデミー賞で名誉賞(現在の国際長編映画賞)を受賞し、日本映画の存在を、世界に知らしめた名作である。片方だけの靴、水筒に入っていた泥、耳の怪我は、立場を変えるとまったく逆になるというのが素晴らしかった。
担任の保利(永山瑛太)先生が、火災のときにガールズバーにいたらしいという噂が先入観になり、前半は「暴力先生」「クズ先生」にしか見えなかった。先入観は恐ろしい。
田中裕子さん演じる伏見校長の「誰かにしか手に入らないものは幸せなんかじゃない。誰でも手に入るものを幸せって言うの」というセリフが妙に心に残った。ホルンを吹いたときのセリフでした。
坂本龍一は「戦場のメリークリスマス」(1983年)で英国アカデミー賞作曲賞、「ラストエンペラー」(1987年)で日本人初となる米アカデミー賞作曲賞を受賞している。特に本作のエンドロールで流れるピアノ曲が心にしみる。
なお、メインのロケ地は長野県諏訪地域。小学校は2021年に閉校した諏訪市の旧城北小学校だという。
岡谷市の商店街では、9日から映画を記念するミュージアムがオープン。岡谷市の「童画館通り」に面する会場の「ふれあいホール」では、主人公の男の子たちが秘密基地にしていた廃車となった電車での撮影の際に使われた美術セットや小道具、それに電車内の飾り、撮影時の写真展示されているという。入場無料で、来月中旬まで開かれているという。行ってみたいな。
それから長野県内の映画館などで、ロケ地マップを配布しているようだ。PDFでもいいが、やっぱり印刷したものを手にいれたい。長野グランドシネマズが一番近いかな。
↓公式サイト
https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
↓ロケ地マップ(1950PDF)
http://www.suwafc.com/wp/wp-content/uploads/pdf/kaibutsu_locationmap.pdf
↓予告編動画
【訂正】 「…誰でも手に入るものを幸せって言うの」というセリフは安藤サクラじゃなくて、田中裕子のセリフでした。ご指摘をいただいたので直しました。ありがとうございました。
今日の
最低気温17.1度、最高気温26.9度。曇り。
↓#ワークマン女子

↓開店時の行列

↓オープンのちらし

○……富岡のパティオ近くに昨日オープンした「#ワークマン女子」を覗いてきた。女性用だけかと思ったら、男物も少しあった。開店時間の午前10時には、30人ほどが行列を作っていた。中を見ただけで、何も買わなかった。
↓高倉町珈琲

隣の「高倉町珈琲」は6月30日オープン。こちらの方が楽しみ。
★★★★
是枝裕和監督が坂元裕二のオリジナル脚本で描いた問題作「怪物」。特撮の怪獣映画ではない(笑)。坂元の脚本は第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で脚本賞を受賞した。そして、音楽は3月に他界した坂本龍一が手掛け、本作が遺作となった。必見の映画である。

映画の舞台は大きな湖のある郊外の町。小学生の息子・湊(みなと)を愛するシングルマザーの早織(安藤サクラ)が、担任の保利(永山瑛太)からいじめと暴力を受けていることを知り、学校へ乗り込む。学校側は形式的な謝罪をして深々と頭を下げるだけ。説明は一切しない。それは子供同士のけんかが原因のものに見えたが、担任や児童の目線で事件を見ると、まったく違って見える。これをマスコミが嗅ぎつけ、社会を巻き込んだ事件に発展していく。そしてある嵐の朝、当事者子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。これ以上、ストーリーを書いてもネタバレになる。映画館で見ないと、この映画の良さが分からない。
後半は湊と同級生の依里(より)との関わりが中心になり、台風の一夜の出来事によりLGBTを自覚していく。LGBTを小学生に演じさせるのはこれが限界なんだろう。
LGBTなど性的少数者への理解増進法案に関し、自民、公明、日本維新の会、国民民主4党が合意した修正案を賛成多数で可決した。6月13日の衆院本会議で可決され、参院に送られる。来週中にも成立する。このタイミングで映画を公開したのは、営業的にも考えたことだろう。
主演といってもいい男の子2人の演技は圧巻だ。自然体で付き合っていた2人を追い込んでいったのは、クラスメイトであり、学校であり、社会であり、マスコミだった。恐ろしいのはこれらの「怪物」だったのだ。だが、「嘘」も混じっていることから、真相は「藪の中」にある。
学校内で起きた同じ事件が、立場を変えるとまったく正反対の内容になるという2部構成の映画は、黒澤明監督の「羅生門」(1950年)と同じ手法。「羅生門」は第12回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞、第24回アカデミー賞で名誉賞(現在の国際長編映画賞)を受賞し、日本映画の存在を、世界に知らしめた名作である。片方だけの靴、水筒に入っていた泥、耳の怪我は、立場を変えるとまったく逆になるというのが素晴らしかった。
担任の保利(永山瑛太)先生が、火災のときにガールズバーにいたらしいという噂が先入観になり、前半は「暴力先生」「クズ先生」にしか見えなかった。先入観は恐ろしい。
田中裕子さん演じる伏見校長の「誰かにしか手に入らないものは幸せなんかじゃない。誰でも手に入るものを幸せって言うの」というセリフが妙に心に残った。ホルンを吹いたときのセリフでした。
坂本龍一は「戦場のメリークリスマス」(1983年)で英国アカデミー賞作曲賞、「ラストエンペラー」(1987年)で日本人初となる米アカデミー賞作曲賞を受賞している。特に本作のエンドロールで流れるピアノ曲が心にしみる。
なお、メインのロケ地は長野県諏訪地域。小学校は2021年に閉校した諏訪市の旧城北小学校だという。
岡谷市の商店街では、9日から映画を記念するミュージアムがオープン。岡谷市の「童画館通り」に面する会場の「ふれあいホール」では、主人公の男の子たちが秘密基地にしていた廃車となった電車での撮影の際に使われた美術セットや小道具、それに電車内の飾り、撮影時の写真展示されているという。入場無料で、来月中旬まで開かれているという。行ってみたいな。
それから長野県内の映画館などで、ロケ地マップを配布しているようだ。PDFでもいいが、やっぱり印刷したものを手にいれたい。長野グランドシネマズが一番近いかな。
↓公式サイト
https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/
↓ロケ地マップ(1950PDF)
http://www.suwafc.com/wp/wp-content/uploads/pdf/kaibutsu_locationmap.pdf
↓予告編動画
【訂正】 「…誰でも手に入るものを幸せって言うの」というセリフは安藤サクラじゃなくて、田中裕子のセリフでした。ご指摘をいただいたので直しました。ありがとうございました。
今日の足跡
最低気温17.1度、最高気温26.9度。曇り。
↓#ワークマン女子

↓開店時の行列

↓オープンのちらし

○……富岡のパティオ近くに昨日オープンした「#ワークマン女子」を覗いてきた。女性用だけかと思ったら、男物も少しあった。開店時間の午前10時には、30人ほどが行列を作っていた。中を見ただけで、何も買わなかった。
↓高倉町珈琲

隣の「高倉町珈琲」は6月30日オープン。こちらの方が楽しみ。
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